京都市立芸術大学日本伝統音楽研究センター

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伝音アーカイブズ

能〈羽衣〉楽譜付(その2)

謡の縦書き楽譜 凡例

  • 「その2」の画面の右側におかれている「縦書き譜」は、能〈羽衣〉楽譜付(その1)に示した楽譜と同じ楽譜であるが、「その2」では右側に新たな欄をもうけて、小段名称、ワキ型付、シテ型付を示した。また、楽譜の上部には、笛の旋律型名称、小鼓・大鼓・太鼓それぞれの手の名称を書き加えた。
  • 小段名称は、能楽研究家、横道萬里雄氏の提唱した用語法に倣っているが、それに従わず、謡本に用いられてきた伝統的な曲節名称を優先的に採用した場合もある(〔カカル〕〔詞〕など)。
  • ワキ型付は、飯塚恵理人「新城 川村類造手沢本『高安流脇仕舞付 乾』」『椙山国文学』28号、2004年)に翻刻された「羽衣」の型付を、楽譜と映像の流れにそって、部分部分に分けながら、そのまま引用して載せた。また、( )内に示しているのは、出演者の有松遼一氏の希望によって、書き加えた部分である。
  • シテ型付は、雑誌『観世』昭和49年(1974)3月号に掲載されている「羽衣型付—宗家所蔵本に拠る」 を、楽譜と映像の流れにそって、部分部分に分けながら、そのまま引用して載せた。また、序之舞の部分については、観世清和『観世流舞囃子形付』檜書店、2001年)の記載を部分部分に分けながら、そのまま引用して載せた。破之舞の部分については、引用する資料がなかったので、舞い手の河村晴久氏との相談の上で、最終的な表記を決めた。
  • 笛の旋律型の名称については、演奏者の森田保美氏が用いておられる用語にしたがった。小鼓の手の名称は、大倉源次郎著『大倉流大鼓小鼓手付大成第一集』(大倉会、1991年)所収の「小鼓手組初出一覧」の表記にしたがう。大鼓については、演奏者の河村大氏が用いておられる名称を掲載した。太鼓の手の名称については、金春惣一(惣右衛門)著『金春流太鼓全書』(能楽書林、1953年)に、そのまましたがった。
  • 手の名称の書き方について。囃子の各パートで、ひとつの手が複数のクサリに渉っている場合には、連続するシートに同じ名前を、繰り返して書き込んでいる。ひとつのクサリ(ひとつのシート)の中で手がかわる場合には、前半と後半の手の名称の間に「・」をおいて区別をはっきり示した。
  • 太鼓が入っている箇所からは、楽譜が2拍目からはじまっている。そのとき、とくに大鼓の手が、太鼓に先行して、1拍までおわってしまっている場合がある(5-75「カケ切」など)。そのような場合には、手の名前を(  )に入れて示した。逆に言えば、手の名称が(  )に入っている場合には、その前のシートに手の粒が示されている、ということになる。
  • 拍の記載方法(フォーマット)について。能のリズム(拍子)は、1拍ではじまり8拍目でおわる。しかし、実践上では、1拍をうつために8拍目から準備をするため、1クサリの開始は、8拍であるとするのが、実践上の常識といってよいだろう。したがって、ここでは、8拍目から記載を始めることにしてある。そうすると、理屈としては、一枚のシートのおわりは、7拍目になるべきである。しかし、重複があったほうがわかりやすいので、一枚のシートが8拍目でおわるようにした。その最後の8拍目が、次のシートの最上部の8拍と同じものをさすということになる。
  • したがって、横線が表している拍の番号は、上から「8、2、4、6、8」となる。その間に「1、3、5、7」という奇数拍を示す横線を薄く入れてある。コミの間(陰)として認識される偶数拍(8、2、4、6)の重要性を示すための方法であり、現在通行している八割の記譜のフォーマット(1拍から8拍まで、奇数偶数をとくに区別せずに並べて記す方法)とはことなることを強調しておきたい。
    8 (1) 2 (3) 4 (5) 6 (7) 8
    また、太鼓地(太鼓が演奏に参加している部分)については一クサリを第2拍から始めているので、最後の2拍目と次のシートの最上部の2拍目が重複している。
    2 (3) 4 (5) 6 (7) 8 (1) 2

(凡例執筆担当:藤田隆則・高橋葉子)

謡の横書き楽譜 凡例

  • 「その2」の下部に置かれている謡の横書き楽譜は、詞章と基本的に謡われる音の動きを記したものである。拍子合の部分には、拍子感の目安として2拍、6拍に拍線を付加し、三ツ地謡で生じる拍の縮約箇所には、▼を付加した。
  • 譜線は各流派の音階概念に従い設定した。ヨワ吟の譜線は、基本の三つの音(上音・中音・下音)を実線、補助音(クリ音・上ウキ音・中ウキ音・下ノ中音)を点線とし、呂音(点線)を適宜に付加し、サシや掛ケ合(カカルなど)部分は二音(上音・中音)を実線とした。ツヨ吟の譜線は基本の二音(上音・下音)とした。地取リは便宜上、台詞と区別するために一線上に記譜した。
  • 謡の詞章は、シテと地謡をシテ方観世流、ワキをワキ方高安流の謡本に従った。平仮名は現代式仮名遣いを用い、譜線下部に歴史的仮名遣いを括弧で囲んだ。漢字表記は便宜上、拍の縦線や旋律の変化などが当たる場合に仮名で表記した。発音変化を伴う詞章を譜線下部に記し、呑・含・ツメルなどその種類も記した。
  • 基本的にはモチを表記していない。
  • 基礎的なフシであるクリ・入リ・マワシ・フリ・中マワシ・走リは、譜線上部にその名称を付加し、旋律移動がイメージしやすいように図形的な曲線へとそれぞれ記号化した。フリを引キで謡う場合は、フシ名称を表記しない。
  • アゲ・サゲ・フリで生じる産み字は太字カタカナで表記し、ウキ・落シの産み字は小文字の細字カタカナで表記した。ウキ・落シの扱い方は基本的に映像音源に従うが、実践での多様性が大きいため、流儀内の習慣的な謡い方も考慮して表記した。
  • 演者が伝承する音の高さが謡本に示されたものと差異がある場合は、目安として音の高さに↓↑を付加した。

 

楽譜の製作は、坂東が原案を作成し、複数の研究会メンバーによる校正作業の後、シテ方河村晴久氏とワキ方有松遼一氏を囲んで検討会を重ねて修正をおこなった。最終的な楽譜に丹羽幸江氏が点検を加えた。楽譜を貼り付けるタイミングの測定は、関本彩子氏が担当した。その後、複数のメンバーで確認・修正をおこなった。

(凡例執筆担当:坂東愛子)

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公開:2022年03月31日 

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